もう何度も書いているかもしれないほど、お気に入りの受講生がいます。
彼は新入職員の時、ふたつのテーマで私の研修を受けていました。
研修が終わると必ず彼は私の元にやってきて
「先生、ありがとうございました。頑張ります」と笑顔で丁寧にお辞儀をして帰るのです。
もう、それだけで私からみたら可愛いと思いますし、年間に何千人もの受講者がいる中で、ひときわ目立つ印象深い人になります。
全ての研修で受講者一人一人の名前を覚えることはできませんし、少人数の研修でたとえその場で全員の名前を覚えたとしても、研修が終わるとすぐに忘れてしまいます。
しかし、それでも数人の名前と顔はよく覚えていて、彼はそのうちの一人でした。
お客様に名前と顔を覚えてもらう
これはとても大事なことです。
なぜかと言うと、多くの営業パーソンの中から選んでもらう必要があるからです。
また、今は金融ニーズはなくても、時期を経て金融ニーズが発生したタイミングに、お客様から思い出してもらえることもあります。
私たちは商品やサービスを売っているのと同時に、自分のことも売っているという意識は必要でしょう。
そして、そんな彼ですが、ある部門で県内の営業成績がトップです。
ちなみに、彼はその元気な挨拶が仇となり、「うるさい」などと言われ意地悪なパートさんに潰されそうになったこともありました。
業績優秀者でも影に苦労した経験はあるものです。
その彼ですが、昨年度の研修(彼は受講していない)の最終日に、わざわざ私に会いにきてくれました。
(こういうことができるのも、お客様から好かれる要因ですね)
もちろん私としても嬉しく、ますます彼のことを応援したくなります。
その彼に聞いてみました。
「なぜ、そんなに売れているの?」
すると、彼は次のように答えました。
「今の支店長が素晴らしい人で、〇〇してくれるので、その支店長に恥をかかせたくないからです」と。
だから頑張って売っているそうです。
いやあ、参りました(笑)
私としては彼なりのセールススキルを伝授してもらおうと思ったのですが、この答え!ますます周りが応援したくなるのがわかる気がしませんか?
先日、キャリアコンサルティングをした方に他の会場で会うことがありました。
私から声をかけたのですが、その時の素っ気ないあいさつに、少しさみしく感じてしまったのです。
もしかしたら、相手は素っ気ない態度をとったつもりはないのかもしれません。
それで、冒頭の彼のことを思い出してしまったというわけです。
今は同じ舞台には立っていない二人が目の前にいて、何かを提案してきたら、提案内容にさほど差がなければ私は前者にかなり傾くでしょう。
何かをお願いされたら、前者のお願いを先に聞くでしょう。
ほんの些細なことですが、その些細なことは積み重ねられます。
おそらく前者の彼も後者の彼も大抵は同じ様に人に対して接するのではないでしょうか。
日頃の人との関わり方が大きく影響するのです。
手柄を人のものにする
もうひとりの例をあげましょう。
私の知人に優秀な営業パーソンがいます。
その人は、なんでも人の手柄としてしまうのです。
「啓子さんのおかげで○○がうまくいきました」とよく口にします。
いや、それはどうみても私のおかげでもなんでもなく(謙遜しているわけではなく)あなたの実力でしょうと思うことしばしば。
とにかく「これを教えてもらったので」とか「先日お話ししたおかげで」と何でも私の手柄にして感謝の言葉を伝えてくるのです。
おそらく、彼は私にだけでなく、やはり他の人にも同じことをしていると思います(笑)。
「あざとい」と思う人もいるかもしれませんが、言われた人の多くは心地よいのではないでしょうか。
手柄というのは自分のものにしたい人が多い中、それをあえて人のものにして、巻き込んでいく・・・素晴らしいコミュニケーションスキルだと思います。
どれだけ相手のこと、とりわけお客様のことを表せるのか、立てられる(輝かせる)かがセールスパーソンとしての重要な資質であるということを知っておくとよいでしょう。